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山下 裕太特定社労士・15年実務

長年この仕事をしてきた肌感覚で言うと、「自己都合退職です」と相談に来られる方の3人に1人は、特定理由離職者に該当する可能性を持っています。ところが、ご本人はほぼ例外なくその制度を知りません。「自己都合だから2か月は無収入ですよね」と、当然のように覚悟して来られる。

その覚悟、いったん保留にしてください。

特定理由離職者とは何か

形の上では自己都合退職でも、辞めるだけの正当な理由があったと認められた人の区分です。認定されると、待遇がこう変わります。

該当する12のケース

行政の基準を、相談の多い順に近い形で並べ替えてみます。

心身の事情――①体力の不足、心身の障害、疾病(うつ症状・適応障害を含む)により働き続けられなかった。②妊娠・出産・育児のため退職し、受給期間延長を受けた。

家族の事情――③父母の死亡・疾病等で扶養や介護が必要になった。④配偶者や扶養親族との別居生活が続けられなくなった。⑤配偶者の転勤・出向についていくため転居した。⑥結婚に伴う転居で通勤できなくなった。

通勤の事情――⑦事業所の移転で通勤が困難になった(往復4時間程度が目安)。⑧交通機関の廃止・変更で通えなくなった。⑨保育所の関係で転居し通勤困難になった。

契約の事情――⑩契約更新を希望したのに雇い止めされた。⑪希望退職の募集に応じた。⑫その他、これらに準ずるやむを得ない事情。

最多パターン「体調不良」の認定を取るには

①の体調不良は、相談件数が最も多く、そして準備の差が最も出る類型です。ポイントは、「働き続けられない状態だった」ことを客観的に示せるかどうか。

決定的に重要なのが、退職前に医療機関を受診しておくことです。眠れない、涙が止まらない、動悸がする――こうした症状は心療内科や内科の立派な受診理由です。退職後の初診でも事情次第で考慮はされますが、在職中の受診記録がある場合と比べて説得力の差は歴然です。診断書に「就労の継続が困難」といった文言があれば、さらに強い。

ひとつ注意があります。失業保険を受給するには「今は働ける状態」であることが前提です。療養に専念すべき状態の方は、順番として先に傷病手当金を検討してください。この使い分けは「うつ・体調不良で退職するとき」の記事に整理してあります。

認定の流れと、よく聞かれること

手続き自体は普通の申請と同じで、ハローワークでの手続き時に事情を話し、証拠書類を出すだけです。結果は受給資格者証の離職理由コードで確認できます。

「退職届に『一身上の都合』と書いてしまいました」――問題ありません。判定は書式ではなく実態で行われます。「会社に病気のことを知られたくないのですが」――認定の過程で会社に病名などが詳細に伝わることは基本的にありません。「証拠が何もないんです」――これから作れるものがあります。今からでも受診する、通勤時間の客観資料を揃える。手続き前ならまだ打てる手があるので、諦める前に一度ご相談を。