※ ご本人の同意を得たうえで、個人が特定されない範囲で内容を再構成しています。金額・期間は当時の状況に基づくもので、同じ結果を保証するものではありません。
ご相談時の状況
M.S様、51歳。金属加工の工場に23年勤務し、月収34万円。業績悪化を理由に、上司から約2か月の間に5回、個別面談で「若い人に席を譲ってやってくれないか」と告げられ、退職届を提出しました。
後日届いた離職票の離職理由欄には、こうありました。「自己都合(一身上の都合)」。
「自分で退職届を書いたのは事実です。でも、納得がいかなくて」――そう言って相談に来られました。その違和感は、正しかった。
これは「退職勧奨」である
ヒアリングで確認できた事実は3つ。約2か月で5回の退職を促す面談があったこと。そのうち2回分の録音がスマホに残っていたこと。繁忙期の残業が月60〜70時間に達する月が3か月続いていたこと(給与明細の残業時間欄に印字あり)。
継続的に退職を促す面談は、典型的な退職勧奨です。これに応じた退職は、自分で退職届を書いていても特定受給資格者(会社都合と同等の扱い)に該当します。おまけに残業時間は、それ単体でも基準(連続3か月45時間超)をクリアしていました。二重に該当していたわけです。
異議申し立ての実際
やったことは淡々としています。離職票-2の本人判断欄で会社側の主張に「異議あり」を選択して手続き。証拠として、録音データ(要旨の書き起こしを添付)、面談日時のメモ、給与明細6か月分を提出しました。
ハローワークから会社への照会に対し、会社側は当初「本人の意思による退職」と回答してきました。しかし録音と勤怠記録という物証の前に主張は維持できず、約3週間で退職勧奨による離職(特定受給資格者)として認定。会社と一度も直接争うことなく、行政の判定という形で決着しました。
結果
- 離職区分:一般離職者(150日・給付制限あり)→ 特定受給資格者(330日・制限なし)
- 基本手当日額:約6,300円
- 受給の途中で公共職業訓練(機械保全コース)を受講し、訓練延長給付も活用
- 受給総額:約320万円(当初見込み約95万円から約225万円の増額)
- 付随効果:国民健康保険料の軽減で年間約18万円の負担減
ご本人の言葉
「録音なんて、正直、役に立つのか半信半疑でした。それが決め手になった。50代の転職は甘くないですが、300日の支えと訓練校で取った資格のおかげで、いまは別の工場で機械保全の仕事をしています」
担当より
離職票の「自己都合」の文字は、会社の言い分にすぎません。判定するのはハローワークです。そして45歳以上・勤続20年以上の方は、区分が変わったときの差が制度上最大級(150日か330日か)。M.S様の225万円という増額幅が、それを物語っています。面談の録音、日付のメモ、給与明細。手元に何が残っているか、捨てる前に一度見せてください。