休職中の方から届く相談で、圧倒的に多い誤解がこれです。「退職したら傷病手当金は終わりですよね。だから退職できないんです」。
違います。条件を満たせば、傷病手当金は退職後も続けて受け取れます。最長1年6か月の残り全部を、です。この「資格喪失後の継続給付」を知っているかどうかで、退職の決断はまるで違うものになります。
継続受給の条件は3つ
条件1:退職日までに継続して1年以上、健康保険に加入していた
ご自身の健康保険証(またはマイナポータル)で資格取得日を確認してください。今の会社で1年未満でも、前職との空白が1日以内なら通算できます。国民健康保険の期間はカウントされない点に注意。ぎりぎり1年に足りない方は、退職日を数週間ずらすだけで条件を満たせることがあります。
条件2:退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態だった
「受けられる状態」というのがミソで、実際に振り込まれていなくても、在職中に労務不能で3日連続の待期が完成し、4日目以降も働けない状態であればOKです。逆算すると、在職中に休み始めていることが絶対条件。退職してから「実は体調が悪かった」と申請しても、継続給付にはなりません。
条件3:退職後も引き続き労務不能である
退職日をまたいで、働けない状態が続いていること。ここで最大の落とし穴が、退職日当日の出勤です。最終日に出勤して勤務すると「労務不能が途切れた」とみなされ、継続給付の権利ごと失う恐れがあります。挨拶も引き継ぎも、退職日より前に。当日は休んでください。
金額と期間
支給額は、ざっくり言えば給与(標準報酬月額)の3分の2。月収30万円なら月約20万円です。期間は支給開始日から通算で最長1年6か月。退職したからといって短くなることはありません。なお、失業保険と違って傷病手当金も非課税です。
退職後の申請は「会社を通さない」
在職中の申請は会社経由が基本ですが、退職後は本人が直接、協会けんぽ(または健保組合)に申請します。会社に病名を知られたくない方には、むしろ気が楽になる変化かもしれません。
申請書には医師の意見欄があり、通院のたびに「労務不能だった期間」を証明してもらう形になります。申請は1〜2か月分ずつまとめて行うのが実務的。初回だけは在職中の欠勤や給与の状況を会社に証明してもらう欄があるため、退職前に総務へ「傷病手当金の申請をするので協力をお願いします」と伝えておくとスムーズです。
よくある質問を3つだけ
「退職金や有給消化と両立できますか?」――有給を使い切ってから欠勤期間に入る設計はよくあります。ただし待期3日の成立との兼ね合いがあるので、退職日までのカレンダーは慎重に組んでください。
「失業保険はどうなりますか?」――受給期間延長を申請して凍結します。傷病手当金を受け切って回復したあとに、失業保険を受給する流れです。この延長を忘れると失業保険側が消滅するので、セットで覚えてください。
「障害年金との関係は?」――療養が長引きそうな場合、1年6か月経過後は障害年金の検討に入ります。同一傷病で両方を受ける場合は調整がありますが、切れ目なく支えをつなぐ設計が可能です。
退職日の設定ひとつ、最終日の過ごし方ひとつで結果が変わる制度です。休職中で退職を迷っている方は、決断の前にご自身の加入期間と待期の状況だけでも確認を。無料相談で一緒に整理できます。