傷病手当金で収入の3分の2は確保できたとして、次に家計を圧迫するのが医療費です。通院、薬、ときには入院。収入が減ったタイミングで支出が増えるのが療養期間のつらいところですが、ここにも使える制度がちゃんとあります。FPの立場から、退職・療養中の方が実際によく使う2つを紹介します。
高額療養費制度 ― 医療費の自己負担に「上限」を付ける
1か月(暦月)の医療費の自己負担が一定額を超えたら、超えた分は払わなくてよい――これが高額療養費制度の骨格です。上限額は年齢と所得で決まり、例えば70歳未満で年収370万円以下の区分なら、月の自己負担上限は57,600円。住民税非課税世帯なら35,400円まで下がります。
ポイントは、退職して国民健康保険に移った場合、この所得区分が前年の所得で判定されることです。退職の翌年になると前年所得が下がるため、区分も下がり、上限額がさらに低くなることがあります。長めの療養では、年をまたいだ区分の見直しも頭に入れておいてください。
「限度額適用認定証」を先に取る
高額療養費は本来「いったん払って後から戻る」仕組みですが、あらかじめ限度額適用認定証を取得して窓口に出せば、支払いそのものが上限額で止まります。立て替えの負担がなくなるので、入院や高額な検査の予定がある方は先に手配を。マイナ保険証を使えば、認定証なしで同じ扱いを受けられる医療機関も増えています。
自立支援医療 ― 精神科・心療内科の通院が1割負担に
うつ病や適応障害で通院を続ける方に、ぜひ知ってほしいのがこちらです。自立支援医療(精神通院医療)を申請すると、対象の通院医療費・薬代の自己負担が3割から1割に下がります。さらに所得に応じた月額上限も設定されるため、通院が長引いても負担が読みやすくなります。
申請先は市区町村の窓口。医師の診断書と保険証、マイナンバーの分かるものを持って手続きします。有効期間は1年で更新制。「通院はしばらく続きそうだ」と感じた時点で申請するのがおすすめです。指定した医療機関・薬局でのみ適用される仕組みなので、申請時にかかりつけを登録するのを忘れずに。
2つの制度の使い分けと合わせ技
整理すると、外来・入院を問わず医療費全般の月額に天井を作るのが高額療養費、精神科通院に特化して日々の負担率を下げるのが自立支援医療です。精神科通院が中心の方は自立支援医療で1割にしたうえで、入院や他の診療科の出費がかさむ月は高額療養費で受け止める、という二段構えになります。
加えて、支払った医療費は年間10万円(所得によってはそれ以下)を超えれば医療費控除の対象です。通院の交通費も含められます。領収書アプリでも封筒でも構わないので、記録だけは残しておきましょう。還付申告の際に効いてきます。
収入側の制度と組み合わせて全体設計を
療養中のお金は、傷病手当金(収入の確保)、高額療養費・自立支援医療(医療費の圧縮)、国保・年金の軽減免除(固定費の圧縮)という3層で設計すると、貯金の減りが目に見えて緩やかになります。どれも申請主義――こちらから手を挙げない限り適用されない制度ばかりです。何から手を付けるべきか分からない方は、現状を伺ったうえで優先順位をつけるところから、無料相談でお手伝いします。