これは実際にあった相談です。会社都合で退職し、給付日数270日の権利を持っていた50代の男性。「しばらく貯金で暮らせるから」とハローワークに行かないまま半年が過ぎ、いざ手続きに行ったところ、窓口でこう告げられました。「受給期間の関係で、満額は受け取れません」。
結果、約90日分――金額にして50万円以上が、そのまま消えました。
「給付日数」と「受給期間」は別物
失業保険には、似ているようで全く違う2つの期限があります。
- 所定給付日数:受け取れる日数の上限。90〜360日
- 受給期間:受け取れる期限。原則、離職日の翌日から1年間
基本手当は「受給期間内に、給付日数を上限として」支給されます。砂時計が2つ同時に落ちているイメージです。片方(給付日数)は認定を受けた分だけ減り、もう片方(受給期間)は何もしなくても毎日減っていく。冒頭の男性が失敗したのは、この2つ目の砂時計の存在を知らなかったからです。
給付日数が多い方ほど、このルールはシビアに効いてきます。270日・330日クラスの権利をお持ちの方は、離職票が届き次第、できるだけ早く手続きをしてください。
働けない事情があるなら「受給期間延長」
とはいえ、すぐに求職活動を始められない事情を抱えた方もいます。病気やけが、うつなどの精神疾患、妊娠・出産・育児、親の介護。そういう場合のために、受給期間そのものを止めておく制度があります。それが受給期間延長です。
働くことができない状態が30日以上続いた場合に申請でき、働けなかった日数分だけ期限が後ろにずれます。延長できるのは最大3年(本来の1年と合わせて4年)。申請はハローワークの窓口のほか、郵送や代理人でも可能なので、体調が悪くて外出できない方でも手続きできます。診断書などの証明書類が必要になるので、事前に管轄のハローワークへ電話で確認しておくとスムーズです。
傷病手当金と組み合わせるなら延長は必須
体調不良で退職する方にとって、この延長手続きは「やっておくと便利」ではなく「やらないと失業保険が消える」レベルの必須事項です。
理由は単純で、健康保険の傷病手当金は最長1年6か月受給できるからです。失業保険の受給期間は1年。延長せずに傷病手当金を受けていると、療養中に失業保険の期限が切れます。先に延長を申請しておけば、傷病手当金を受け切ったあと、回復してから失業保険を丸ごと受給できる。このひと手間の差が、トータルで100万円以上の差になった事例を、私は何度も見てきました。
定年退職の方には別の特例
60歳以上で定年退職された方には、少し毛色の違う特例があります。「しばらくゆっくりしてから働きたい」という場合、離職日の翌日から2か月以内に申請すれば、受給期間を最大1年延長(合計2年)できます。退職後すぐ求職する気になれないけれど、失業保険は捨てたくない――そんな方のための制度です。申請期限が2か月と短いので、定年後の休養を考えている方は先に手続きだけ済ませておきましょう。
ご自身のケースで「いつまでに・何を」すべきかは、退職日と体調・家庭の状況によって変わります。判断に迷ったら、手遅れになる前に無料相談をご利用ください。