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山下 裕太特定社労士・15年実務

この仕事を15年やってきて確信していることがあります。失業保険で損をする人の大半は、計算を間違えたのではなく、離職理由の区分を疑わなかった人です。

会社都合か、自己都合か。この区分ひとつで何がどれだけ変わるのか、まず具体的に見てもらいましょう。

変わるもの、全部で5つ

会社都合(特定受給資格者) 自己都合(一般離職者)
給付制限 なし 原則1か月(条件により最長3か月)
初回振込の目安 約1か月後 約2〜4か月後
給付日数 90〜330日 90〜150日
受給資格 直近1年に6か月 直近2年に12か月
国保の軽減 あり(前年所得を3割で計算) 原則なし

数字で実感してもらうなら、47歳・勤続22年・日額8,000円の方の場合。自己都合なら150日で約120万円。会社都合なら330日で約264万円。差額はおよそ144万円です。同じ人、同じ給与、同じ勤続年数で、です。

「会社都合」は解雇だけを指す言葉ではない

ここからが本題です。特定受給資格者(いわゆる会社都合扱い)に該当するのは、倒産や解雇だけではありません。行政の基準には、こんな項目が並んでいます。

共通するのは、退職届を出したのが自分でも、そこに至った原因が会社側にあれば該当し得るということ。「肩たたきに応じて退職願を書いた」「残業続きで体がもたず辞めた」――ご本人は自己都合だと思い込んでいるけれど実は違う、というケースを、私は数え切れないほど見てきました。

会社が「自己都合」と書いてきたら終わり、ではない

離職票の離職理由欄は、会社が記入します。しかし、それはあくまで会社側の主張です。最終的な判定権はハローワークにあります

手続きの際に「離職理由に異議あり」と申し立てれば、ハローワークが会社と本人の双方から事情を聴き、証拠に基づいて判定し直します。効く証拠の例を挙げると――退職勧奨なら面談の録音やメール、日時のメモ。長時間残業ならタイムカード、PCのログ、給与明細の残業時間欄。ハラスメントなら録音、社内窓口への相談記録、診断書。

当サイトの受給事例に、まさにこの申し立てで「自己都合・150日」が「会社都合相当・330日」にひっくり返った51歳の方の記録を載せています。証拠さえあれば、現実に覆るのです。

よくある3つの心配ごと

「会社都合にすると転職で不利になりませんか?」――離職票の区分が転職先に自動的に伝わる仕組みはありません。面接で退職理由を聞かれたら、事実を簡潔に説明すればよいだけです。

「会社が同意してくれないと無理ですよね?」――いいえ。判定するのは会社ではなくハローワークです。会社が「自己都合だ」と主張し続けても、証拠が揃っていれば覆ります。

「もらえる額は同じで、時期が早いだけでは?」――上の表のとおり、日数も保険料も違います。総額の差は数十万〜百万円超になり得ます。

会社都合の証拠がない方へ ― 第3の区分

録音もタイムカードもない。でも、体調不良や介護、通勤困難といった事情があって辞めた――そういう方には特定理由離職者という区分があります。給付制限が外れ、受給資格も6か月要件に緩和されます。こちらは「特定理由離職者とは」の記事で詳しく解説しています。

いずれにせよ勝負どころは、離職票に署名する前と、ハローワークで手続きする前。この2つのタイミングです。少しでも引っかかりがあれば、動く前にご相談ください。